2025/08/22 01:05


今、Adobeに暗雲が…


Adobe Stockは、今大変なことになっています。AI画像に対する「類似するコンテンツ」却下の嵐が猛威を振るっています。(2025年8月時点)
「同じバリエーションを大量にアップせず、一枚にとどめる」「メタデータや構図などを工夫する」などを行ない却下を回避してきたクリエイターでも、ここ最近どんな対策をしても「類似するコンテンツ」とみなされ八方塞がりになっているようです。

今の状況を調べてみると、これは単なる審査基準の変更などではなく、プラットフォーム運営者であるAdobeとクリエイターとの関係を大きく揺るがす事態に発展していることが分かってきました。




なぜ、「良い作品」でもAdobe Stockでは却下されるのか


一般的なユーザーがストックフォトに求めるのは、普遍的で、汎用性の高い美しい写真です。この点でAIは、何十億枚もの画像データを学習し、「最も平均的で、最も効果的で、最も美しく見える」画像の法則を理解しています。その結果、いわば「写真の黄金律」を再現できるようになりました。

しかし、Adobeの審査システムは、AIが生成した画像はAdobeがこれまでストックしてきた画像と「類似するコンテンツ」、つまり似ている画像と判断し、排除し始めています。つまり、ニーズがある普遍的に美しい画像を提出すると、却下されるという状況なのです。さらに、人間の目から見れば明らかに違っているものでも、Adobeは似ていると判断し却下してしまう状況が激増しています。そのため、正しく評価されていない現状に憤るクリエイターや、Adobeというプラットホームからの撤退を考えているクリエイターもいるようです。


プロンプトと格闘して生み出す作品


「AI作品はボタン一つでできる」という誤解が広まっていますが、事実は全く異なります。

Adobe Stockに提出するようなクオリティの高いAI作品は、時間と、想像力を費やして作られています。一枚の作品を完成させるのに、2,3時間以上かかることも珍しくありません。

それは、クリエイターの意図を正確に反映させるために、プロンプトという「設定値」を何度も何度も調整し、生成と修正をひたすら繰り返す必要があるからです。これは、写真家がカメラの設定値を何度も調整し、何十枚もの中から最高の一枚を選ぶプロセスと少し似ています。私は一眼レフで撮った写真もAdobe Stockで長年販売しているのですが、一写真家としてそう感じます。

ですからAdobeに提出されるAI画像は単なる画像ではなく、クリエイターの頭の中にあるイメージを、具体的な言葉(プロンプト)に落とし込み、納得できるまで何百もの試みを経て初めて出来上がる「作品」なのです。


「類似するコンテンツ」の判定がもたらす4つの深刻な打撃


「類似するコンテンツ」による審査落ちは、クリエイターに以下のような深刻な悪影響をもたらしているようです。


1、創作の自由の喪失

現状、今のAdobe Stockではクリエイターが「普遍的な美しさ」を追求しようとすると、却下されるリスクを負うことを意味します。その結果、奇抜で、これまでにない構図やテーマを無理に探さざるを得なくなり、本来の自分らしいクリエイティブな表現が歪められたり、萎縮する可能性があります。


2、既得権益の固定化と新規参入の壁

最も深刻なのは、このシステムが「既得権益」を固めてしまうことです。普遍的な人気テーマでは、既にたくさんの画像がストックされています。しかし、今後はそのテーマでどれほど質の高い作品を投稿したとしても、Adobeは「既に似たものが存在している」として却下します。 これにより、古くから投稿しているクリエイターが市場を独占し、新しい才能の参入を阻んでいるという不公平な構造を作り出しています。


3、収入という生命線の不安定化 

Adobe Stockは、多くのフリーランスにとって大切な収入源でした。しかし、審査基準が不透明なまま厳格化されたことで、収益予測が困難になります。この状況は経済的な基盤を揺るがし、創作活動の継続を困難にします。


4、モチベーションの低下とフラストレーション

何時間もかけて作った作品が、理由が不明確なまま「類似するコンテンツ」として却下されることは、クリエイターのモチベーションを著しく低下させています。人間が見れば異なる点が多くても、システムが機械的に「似ている」と判断するため、「努力が無駄になった」と感じ、創作意欲が損なわれることにつながります。




Adobeはどうするのか


Adobeの審査基準は、AI技術の発展という時代の波に乗りながら、クリエイターを大切にするかどうかというAdobeの倫理観を浮き彫りにしています。

今後、Adobeはクリエイターの創造性や利益を守るための明確な審査基準を確立できるのか、それともこのままの立場をとり続けるのでしょうか。この動向は、クリエイターとAdobeの関係そのものを大きく左右するでしょう。